2016年2月発行 『2015年度 市原市医師会雑誌』より転載

JMECCへの参加体験

千葉県循環器病センター 村山博和

 去る11月23日、勤労感謝の日に開催された第3回いちはらJMECCに参加し、久しぶりに心臓マッサージなど救急蘇生法の実技を学ぶ機会を得ました。

 JMECCとはJapanese Medical Emergency Care Courseの略で日本内科学会が実施している「日本内科学会認定内科救急・ICLS講習会」のことです。近年、救急医療の崩壊が叫ばれ、地域救急体制の安定的維持という課題に各医療施設や救急隊が取り組まれている現況については周知のことと存じます。内科学会では、内科医師の基本的素養として幅広い知識を要する疾病救急に対して迅速に対処できる能力の修得を求めています。そこで比較的救急蘇生に接する事の少ない医師にも心肺蘇生をはじめ急病患者に対応できるよう考慮された研修プログラムがJMECCと言うことになります。内容は日本救急学会策定のICLS(Immediate Cardiac Life Support)を基本に、日本内科学会独自の「内科救急」をプログラムに組み入れた構成となっています。私は内科医ではありませんが、市原市医師会主催の研修ということで参加することが出来ました。

 当日は寒い曇りの朝、集合時刻の8時30分に新築後の労災病院へ入りました。受付では桃尾事務長さんが直々に担当されており、参加費1万円(通常1万2千円のところ会員は2千円割引です)を納めて会場に入りました。新しく広い会議室には訓練用の蘇生人形や除細動器が準備万端、配備されていました。渡された小冊子の受講者名簿をみると参加者は9名、初期研修医や血液内科医の方で比較的若い医師が多く見受けられましたが、中には部長クラスの内科医も受講されていました。外科医は私一人で、年長者でだいぶ浮いた存在だと思っていましたが、市原市医師会理事の名前を見つけ少し安心いたしました。講習の総括指導医はMC協議会等救急医療分野で活躍されている千葉労災病院の森脇先生で私も良く存じ上げている先生です。 まず最初に森脇先生からJMECCでは「日常診療で遭遇する予期せぬ容態悪化に対応する能力を実践型教育によって修得する」と言う趣旨や目的についての概説がありました。その後すぐ各斑に分かれて実技講習が始まりました。午前中は1次救命処置(Basic Life SupportとAED使用)、気管内挿管と除細動、心停止への対応実技など、体を動かしての講習の連続です。私は心臓血管外科診療のなかで、手術室やICUで医療用除細動器を使用することは日常茶飯事で当たり前のように用いてきました。しかし、外来待合や市中など一般の現場で急変に直面した時に現在整備されているのは医療用除細動器ではなくAEDです。AEDは一般の方でも使用できるように設定されているわけですが、初めはだいぶ戸惑う事となりました。気が早って電極装着後DCボタンを押そうとするのですが、器械が「今波形を確認しています」などとしゃべってきますのでボタンを押すことはできません。良く考えてみると確かに心室細動か否かを一般現場で判断するのはAEDに頼る以外ないわけで、要は、器械の指示に従わなければならないという事に気づきました。器械がわかりやすく話しかけてくるので一般の方でも容易に使用することが可能な仕組みであることを改めて感じた次第です。

 さて、心臓マッサージについても10年ぶりくらいで実施しましたが、医師会理事の方と「我々のときは確か昔はマッサージ5回に1回の呼吸でしたね」等と話ましたが、現在は胸骨圧迫と人工呼吸の比率は30:2であることを初めて知りました。胸骨の圧迫の程度も5cm程度とされており、実施中は現場にいる第3者が評価して実効性を担保できるように配慮するなど、一口に心臓マッサージといってもきちっとした知識と理解を習得するトレーニングプログラムとなっていることを実感いたしました。 お昼はランチョンセミナーがあり、森脇先生にはお昼もとらずに「心拍再開後の治療としての低体温療法、院内発症CPAに対するECMO(心肺補助装置)による蘇生」について専門的に解説していただきました。

 午後は内科救急総論と内科救急の治療の過程で急に蘇生を要する状況に陥った場合を想定した実技訓練でした。急性冠症候群、アナフィラキシーショック、脳卒中急性期など具体的な症例に直面した救急対応を受講者の皆がチームとなって対応する訓練です。急変した患者の連絡を受けた直後からいかなる病態を想定して、人、物、設備を如何に迅速に集結させて対応するかは頭で考えているだけでは難しく、身を持ってかつ繰り返して体験することが如何に大切かを知ることができました。受講者は実技を行うごとに指導医から注意点、改善点などについてアドバイスを受けることができ、最終的な評価を受けて皆が実技項目の修得の確認を頂くことができました。最後に筆記試験があり知識の確認も行われました。森脇先生から各受講者にJMECC修了証が手渡され研修が終了いたしました。

 救急処置はいつどこで遭遇するかわかりませんが、その時に迅速に対応できるかどうかはやはり日頃の訓練、日常臨床の積み重ねが大切であることを今回の研修で改めて痛感いたしました。JMECCは内科学会が主体となって開発したプログラムですが、対象者は内科学会の会員に限らず広く門戸が開かれている点が良いと思われます。今回、教育スタッフとして森脇先生をはじめとする千葉労災病院の方々だけでなく、千葉県内の他施設や武蔵野日赤病院等、東京、埼玉から総計15名のファシリテータが来ていることを知りました。多くの方々の志と熱意に頭が下がる思いです。会員の先生方におかれましては、多忙な日常臨床の毎日かと存じますが、このような研修も日常とはなれた良い体験となるのではと思い、年男となるにあたって紹介させていただきました。

2015年11月23日受講