『翌日の救急当直で来ましたよ、本物が。』

福井県立病院1年目研修医 石松舞子

2014年6月29日、心窩部痛を主訴に救急搬送された60歳台の男性が、心筋梗塞と診断後、突然心肺停止となりJMECC受講経験が役立った症例がありましたのでご紹介させていただきます。私は当時循環器内科をローテート中で、先生方の勧めで軽い気持ちでJMECCに参加しましたが、まさか受講翌日にシナリオ通りの症例と出会うとは思ってもみませんでした。

11:09 心窩部痛を主訴に救急搬送、到着後も胸痛持続あり。すぐにモニターを装着し12誘導心電図を施行したところ、Ⅱ、Ⅲ、aVfでST上昇を認めました。急性下壁心筋梗塞を疑いただちに循環器内科に連絡し、速やかに治療が開始されました。

「心筋梗塞だ!MONAだ!」と、私は反射的にニトロスプレーを手にとりました(MONA;モルヒネ(M)、酸素(O)、ニトロ(N)、アスピリン(A)のことで、心筋梗塞の初期対応として知られています)。血圧が保たれているのを確認し、11:17ニトロスプレー舌下2プッシュ施行。しごく当然の処置と言えるかもしれませんが、これは私にとっては非常に大きな一歩でした。いつも上級医の指示を受けてからしか行動できなかった自分が、初めて自らすすんで処置ができた瞬間だったからです。すべては前日のJMECCで心筋梗塞に対する薬物治療を用法容量まで含めて何度もシミュレーションしたおかげで、私は確たる自信をもって処置を遂行できたのでした。11:40 バイアスピリン2錠投与。ここでも「アスピリン2錠を、かみ砕いて」という教えが活かされました。

バイタル安定した状態で循環器内科医が到着。カテーテル室に搬送しようとしたその時、患者の意識レベルが急速に低下、呼びかけに応じなくなりました。循環器内科医はすぐに心肺停止であることを確認し、胸骨圧迫が開始されました。彼も前日のJMECCを受講した一人でありました。「除細動器準備してください!救急カートとスタッフを集めて!」救急部内での心肺停止であり、すぐに複数の医師・看護師によりマスク換気、除細動器、アドレナリンなどの準備が進められました。モニター装着後の初期波形が心室細動であったため150Jで電気的除細動を実施。直ちに胸骨圧迫を再開したところ、体動がみられたため胸骨圧迫を中止。意識レベルはGCS15まで速やかに回復し、状況説明後にカテーテル室へ移動となりました。緊急心臓カテーテル検査で右冠動脈#2に完全閉塞を認め、すぐに経皮的冠動脈形成術が施行されたのでした。

今回、心筋梗塞や突然の心肺停止に対してスムーズな初期対応ができ、救命に成功した一例を経験しました。その日、救急部の現場には私を含めJMECCを受講したスタッフが複数人おり、すべての処置を一歩早く進めることができたと感じます。JMECCでは、いったん診断がついてほっとした瞬間にバイタルサインが悪化し、一気に心肺停止に陥るというシナリオを半日かけて繰り返し体に叩き込みます。シナリオの内容は心筋梗塞や重症喘息、造影剤アナフィラキシーなど様々です。目の前で急変する患者に対し、慌てずに初期対応できる度胸と自信が身に付きますし、実際に現場で遭遇する機会があるのだということも身をもって感じました。もしJMECCを受講しないままあの現場に立ち会っていたら、私は一歩下がって上級医の先生方の素早い処置をただ眺めることしかできなかったでしょう。

救命処置は一刻を争う事態です。そのとき自分には何ができるか。いつ遭遇するか分からないその日に向けて、病院スタッフはJMECCで事前シミュレーションしておくべきだと感じます。今回の経験を経て、私はまだ受講していない同期研修医たちには積極的にJMECC受講を勧めています。

2014年6月28日受講